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 2018年6月25日(月)

2009年プライマリ・ケア関連学会連合学術会議参加報告

  • 2009年9月16日(水)
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    3,804

2009年プライマリ・ケア関連学会連合学術会議参加報告
2009.9.1
玉木千里

学会期間)2009.8.21-8.23
会場)国立京都国際会館

<参加したWS>

●ALSO(Advanced Life Support in Obstetrics) イントロダクションコース
23日16:00~18:40

【ALSOについて】
いわゆるALS(Advanced Life Support)の産科版。
1991年にACLSとATLSに基づいて、ウィスコンシン州の一般診療医師二人がALSOを考案し、1993年にコース権利はAmerican Academy of Family Physicians(AAFP─米国家庭医学会)によって認可され、現在全米ではほとんどの分娩施設において、分娩に関わる医療プロバイダーがALSO の受講を義務づけられている。またALSOコースは世界的に普及活動が行われており、2009年現在までに、50ヵ国以上でプロバイダーコースが開催され、10万人以上がALSOコースを完了しているとのこと。

日本では2008年に金沢大学の周生期医療専門医養成支援プログラムグループが、米国家庭医療学会から日本でのALSOセミナー運営権を取得し、 2008年11月に金沢大学医学部にて初めてプロバイダーコース、インストラクターコースを開催した。2009年4月1日より日本におけるALSO普及活動は、NPO法人周生期医療支援機構(本部:石川県金沢市)がALSO-Japan事業として運営をおこなっているとのこと。(http://www.oppic.net/item.php?pn=also_japan.phpリンクを参照)

【内容】
本来は丸2日間のコースであるが、今回は、ミニコースとのことで時間の関係で産科救急の1つである「肩甲難産」がチョイスされていた。
まず、肩甲難産の解除の方法をスライドを使ってレクチャーを受け、その後実際にハンズオンで、母体の人形から胎児をとりあげる実技を練習した。
HELPERRとは、H:Help, E:Evaluation for Episiotomy(会陰切開が必要かの評価)、L:Legs(母体の臀部を屈曲させて産道を広げる:McRoberts法), P: Pressure(腹壁から圧をかけて胎児を押し出す), E:Enter the vagina(指を膣に入れて胎児に回転を加えてつっかえを解除する)、R:Remove posterior arm(胎児の後ろ側の腕をとりだす)、R:Roll the Patient(患者を四つ這いにする)、のことである。

【感想】
プライマリ医の産科への進出の機運を反映してか大変な人気のコースとなり、ハンズオンできる受講生が限られている中で、ラッキーにも申し込みが早くてその限られたメンバーとなることができた。
インストラクターの多くが米国でFPとして働いていた顔なじみの先生ということもあり、まったく臨床経験のない実習であったがわりと身近に感じて楽しく参加することができた。
現在、ALSO-Japanは立ち上がったばかりで、インストラクターが少なく、コースの開催もまだまだ少ないのが現状。今後、KCFMでもマタニティ分野を研修に取り入れていくことができるなら是非とも必須コースと位置付けていきたいところ。先を見越して、私も本番コースの受講の機会をうかがいたい。

 

●外来診療でエビデンスに困ったら~DyneMedを用いてEBMの適応、実践を探る~
23日 8:30~10:00

【概要】

  • DynaMedを開発者であるDr. Brain Alperを迎えて現在AAFPでも認証されたEBM2次検索用データベースであるDynaMedの使用法とその実践についてのWS
  •  一般的なDynaMedの特徴と使用法についてレクチャーを受けた後、模擬研修医と模擬指導医によるケースを用いたシミュレーションが行われた。
  •  DynaMedは、自身家庭医でもあるDr. Alperが最初にEBMを自分でノートをまとめるという作業から出発したもので、その後、医師が日々の診療で意志決定する際に応用する情報というのは実は医師によってかなり多様であることを知り、本当に必要な情報を提供するというニーズに応えることを使命としてDynaMedを開発した。2005年にEBSCO publishingに権利委譲し、現在さらに進化した形で利用者に毎日更新される再診で最も有効なエビデンスを提供し続けている。
  •  改めて再認識した点は、このエビデンスレベルは疫学有識者などを集めたチームによって決定され、そのプロセスはかなりの高い質が保たれているということと、DynaMedの使命として、できるだけ言葉の解釈上で誤解を生まないよう最大限の注意をしつつ簡略した表記を目指している点を特徴としている、ということである。
  •  また、新たな実践上の気づきとして、診断決定プロセスとしても利用できるということである。例えば、キーになる症状をいくつか検索スペースに羅列するとコンピュータがキーワードから最もマッチする項目を選んでくる。それが診断決定にも応用できることを実際に例示していただいた。

 

●池田雅之先生と医学・医療をとことん語ろう
23日 13:10~16:10

  • マッシー池田こと池田先生の日々の診療の観察から出た自己理論の主張が延々3時間続くセッション
  • 池田先生のことは「マッシー池田」名前しか聞いたことがなかったが、本人のブログ!?を覗くと医学的な側面のみならず社会情勢にいたる幅広い問題に対して相当な研究をなされ、省察を蓄積されているのがわかる。
  • プレゼンテーションを聞いてまずその毒舌っぷりに驚いた。なにせ、いきなり「男はみんな発達障害である」という大胆な提言をすることから始まったくらいである。しかし、その理論の根拠を聞いているうちに、いかに奥深い洞察と神経内科医としての特殊な眼力で人や社会事象をとらえているか、に感嘆せざるを得なかった。
  • 特に面白かったのは、男は、①シングルチャネルユーザー、②言語的コミュニケーションに依存する、③外観を気にしない、という発達障害の要素を連続性のスペクトラムで程度の差こそあれみんな兼ね備えているという理論
  • これに反して女性は、①マルチチャンネルユーザー、②非言語的コミュニケーションが使える、③外観が大切
  • 「男性は全て・・・」など極論というか言い過ぎ、という側面はあるにせよその優れた観察力と神経内科医師というバックボーンに裏打ちされた大胆な発想には説得力があり、何よりも男とはこういう性質、女はこういう性質、という男女の機微を整理して言語化した点は、男女関係を考える上で有用であると思われた。
  • プレゼンの中で再三引用していた言葉に、マザーテレサの「まずは家庭を大切にしなさい」があった。社会の最少構成単位である家庭をまず大切にすることができて初めて回りに目がいく。それなくして世界の平和はありえない、という大変深い意味を持った言葉として受け止めた。

 

<参加したシンポジウム>

●中堅医師と若手医師の悩みと楽しみ~明るい未来に向けて~
23日 7:30~8:45
【概要】

  • まず、下記に示すキャリアの異なった4医師からの主張を受け、その後全体で会場参加医師を交えて日頃考えていることを本音でディスカッションする形式
  • KEEPADを導入しており、各医師がスライドの中に交えた質問に対し、即座に会場の反応を見ることが出来るという斬新な試みが見られた。大変、臨場感にあふれてよかったが、データ集計の時点で項目の順番が逆になるというアクシデントあり。(例えば4つの項目のうち、1を選択したら4の項目にエントリーされる)
  • 個人的には、出雲の高橋先生の訴えに大変共感した。彼の主張に、圧倒的に大多数のベッド数を占める日本の中小病院で、もっと家庭医が活躍する必要があるのではないか。勤務医の疲弊に歯止めをかける一つの処方箋として家庭医の病棟への参加が上げられるのでは、という文脈があり、自分の境遇と照らし合わせても病棟が見られる家庭医を育成していくのが自分の役目であると再認識した。

 

【出雲家庭医療学センター後期研修医3年目 高橋賢史先生】

  • ICFMでは、後期研修プログラム後、フェローシップを位置づけているが、その後のビジョンがないことに不安を持っている。
  • しかし、今の地域というフィールドでどれだけ住民の健康管理に責任を持てるかを意識して、診療を続けたいと思っている
  • 日本の200床未満の中小病院は2007年調べで72.7%。日本の病棟医療の大部分を占めるここでこそ家庭医が必要とされない訳が無いはず。
  • 地域の中小病院を担える医師の不足を勘案して、中小病院の病棟も見ることの出来る家庭医の養成を目指している、とのこと。

 

【奈義ファミリークリニック 田原 正夫先生】

  • 呼吸器内科専門医としてのキャリアを持ちつつ家庭医へ転向したという貴重な経験を持つ転向組医師の1人。
  •  90年代後半から日本の医療制度のパラダイムシフトを経験し、もともと様々な患者さんと長く深く関わりをもちたい、という思いからは離れた医療を経験するようになった。
  • 木戸医院を見学したことがきっかけで、TFCと出会い、家庭医療関係のセミナー参加やこの領域の先達と出会う中で、これだ!という確信を得た。
  • 主張として、自分のようなキャリア転向者がこの家庭医の世界で受け入れられるのであれば、転向希望者がもっと家庭医療に転向しやすいような研修制度の柔軟化などの条件整備が必要。転向組用の専門医の認定基準があってもいいのでは?
  • 自分が今後、キャリア転向組のロールモデルでありたい。

 

【川崎市立多摩病院 大橋博樹先生】

  • 医師10年目の立場より
  • 10年目の医師としてこれからは、指導医?家庭医としての実践を積む?得意分野を深める?研究?
  • 自分が何を提供できるか、という視点が大切で、それが臨床でも教育でも研究でも何でもいい。また、これらは両立できるもの
  • 主張としては、まずは臨床の実践者であるべき、そしてそこには市民のニーズに敏感である姿勢が大切。それが家庭医のロールモデルになる。また、開業というチャレンジもあってもいいのでは?

 

【奈良市立月ヶ瀬診療所 藤原靖士先生】

  • 医師歴20年以上
  • 特別な家庭医の研修も受けていないし、他のスペシャリティがある訳でもないことに対する負い目、不安
  • そんな中で自分のアイデンティティーとは?
  • とにかく目の前の患者の役に立っているという事実だけ。それでもいいじゃん!田舎の診療所というフィールドは、家庭医には本当に向いている。若手医師にはとにかく田舎の診療所でやってみるのもいいキャリアになるのでは?

 

<今回参加しての全体の感想>

  • 22日の16時ころ会場到着し、23日の夕方までフル参加。
  • 今回は、5月の予定がインフルエンザの影響を懸念して8月に延期されて開催となった。それに伴ってかなりの運営不備が出た模様。聞いた話では、最初に申し込んだWSが、再度参加確認の際に提出し直したら前回のものと変更されていた、とのこと。私は、再参加申請をしていなかったのにもかかわらず前回の希望のままで、参加WSの通知が届いたのに。
  • 合同学会の抄録集があまりにも出来がプアでがっかりした。具体的には、まず、タイムスケジュールがなく、どこで何が行われているかが一目でわからない。ポスターセッション等、いつはり始めていつ外すかといった情報の記載が非常にわかりにくい、「シンポジウム」「ワークショップ」「ポスター」などは、色を分けて冊子を外から見てもわかるように配慮すべき。
  • KCFMからは、プログラム紹介のポスターを作成したり、KCFMからポスターセッションにエントリーされて演題発表を行った中村先生の活躍が目立った。プログラム紹介では、研修要項の冊子の準備をはじめ、その他、人を惹き付けるような工夫を随所に見せてくれて大きな宣伝効果を得ることが出来たのではないかと思う。
  • 自分のTFCやnipponnokateiiへのMLへの投稿が意図したわけではないが学会開催直前に行えたのも効果的であったかもしれない。
  • 今年は医療人GPにも参加していることであるし、来年は、個人的には是非研究面で何か論文を投稿しようと思う。
  • 今回の学会の成果の1つに、岐阜大学の医学教育開発研究センターに在籍しておられる若林英樹先生と面識が持てたことである。若林先生は、米国はサンディエゴ大学で家族療法(Family Therapy)についての専門研修を積まれた日本では数少ない経験を持つ医師の一人で、今後KCFMにも講演にお呼びしたい旨をお話したところ、喜んでお受けいただくことが出来た。今後、是非実現させて、京都の家庭医療センターのみならず京都民医連の家族ケア能力のレベル向上に一役買っていただければ、と思っている。

以上