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 2018年7月22日(日)

セミナー報告 「第5回 若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー」

  • 2010年2月17日(水)
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KCFMシニアレジデントの中村琢弥です。
2010年2月13-14日、東京大学にて行われました。
「第5回若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー」に、スタッフとして参加しましたのでその報告を行います。
 

若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー

2010年2月13-14日、東京大学にて日本家庭医療学会所属の若手家庭医部会主催にて「第5回若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー」リンクが開催されました。
私は今回シニアレジデント1年目でありながらスタッフ参加ということで、事前より様々な準備に取り組んで参りました。

本会は家庭医の日常使用する「知識的・技術的強化」よりも「概念を深める・コミュニティーを広げる」ことに重点を置いた構成となっております。よって内容は普段の臨床ではちょっと意識しないと素通りしていたような新たな発見がある会となっておりました。

若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー

私が参加したセッションについて紹介いたします。

1)ポートフォリオBasic 「作り方を学ぶセッション」
大曲診療所リンク奥野誠先生リンクによるポートフォリオ作りのセッションです。奥野先生は診療所診療を行いながらビジネス術やコーチングなどを駆使した指導を展開する医師で、この4月から在宅専門クリニックを開業されるようです。

さて、このセッションで扱われているポートフォリオとは「学習者自身が目的をもって収集した学習の過程や成果に関する資料と情報」を意味します。現在KCFMも認定されている「学会認定研修プログラム」の規定では指定数、指定分野のポートフォリオの提出が求められております。(2010年2月現在の詳細はこちらPDFファイルリンク

今回のWSではそもそもポートフォリオとは何なのかから始まり、どういう得があるのか、作るときのポイントなどがアイスブレイクなどを交えながら語られました。特に作成を「スムーズにするための3つの仕組み」(指導医や同僚との共同作業→マイルストーンを置く→ゴールが見える)や「ポートフォリオ作成の4つのポイント」(事例の提示→学習した文献やエビデンスを示す→振り返り→Clinical Pearlsを盛り込む)などが非常に端的に示され、漠然としていたポートフォリオの概念・作成方法などが明確化された思いでした。

必要に迫られて作成するものではなく、ポートフォリオ本来の意味のように、これを作成する過程の中で、作成者の成長があるようなものとしていきたいですね。

2)外来指導見本市~私にはうまく指導できない、あいつにどう教えたら良いんだぁ?~
こちらは奈義ファミリークリニックリンクの松下明先生、弓削メディカルクリニックリンクの雨森正記先生、川崎市立多摩病院リンクの大橋博樹先生の豪華3人のコラボにて行われましたWSです。

今回はタイトルにあるように指導医サイドからのWSであり、若手にして指導医をにらんでいる人にはとても興味深いセッションでした。

具体的には3パターン、「EBMに固執するあまり患者の思いから乖離してしまうレジデント」、「アルコール依存の家人(患者)にレジデント自身の家人を重ね合わせてしまい、怒りの感情を患者家族に抱いてしまうレジデント」「うつ状態に陥ってしまっているレジデント」を3人の指導医自身が実際に目の前で指導のロールプレイをしてみせ、それについてディスカッションするという内容でした。

指導医三人がそれぞれの持ち味を生かして指導すること、またそこにて使用されている指導のテクニックが非常に素晴らしく、人間性と技術のコラボレーションに感嘆しました。またそこで行われたディスカッションも非常に熱いものであり、将来指導医となるひとにとっては大きな刺激となるWSでした。

ここで行われた良質な指導を私も日々実践したいものです。

3)家庭医療のそもそも論
全てのWSに参加したわけではなかったのですが、おそらくは今回もっとも変わり種のセッションではなかったでしょうか。

演者は亀田ファミリークリニック館山リンクの岡田唯男先生。間違いなく日本の家庭医療の第一人者の一人です。今回のWSは岡田先生の最近の「家庭医療とは何か」という思いを参加者とディスカッションするというものでした。

斬新な点は2点。

まず1点目は岡田先生の家庭医療に対する切り口です。家庭医療はこれまで様々に解釈されてきていました。今回岡田先生は家庭医療とニューサイエンス(システム理論や量子力学など)との関連(例:シュレディンガーの猫の話・・・観測者が確認することで事実が確定する。これはその人がどう捕らえるかによって事実が決まるという「NBM」の考えと親和性がある、との論説など)を述べられました。
とくに最後に述べたこの一文は非常にインパクトのあるものでした。そのまま引用します。

家庭医のアイデンティティクライシスと言うけれどそうではない。
全体性、相対性と関係性、非線形性をベースにした新しいサイエンスに基づいた学問である以上、周囲や周囲の状況との関係性に置いて自らを定義しようとしているだけのこと。相手や状況が変われば我々のスタンスも変わる。
臓器専門医がそのような状態に陥らないのは 絶対性、唯物主義、線形性をベースにした古いサイエンスに基づいているから,というだけにすぎない。
目に見えないものや予測不可能性までを包含する豊かな世界観をもった新しい科学に基づいてこのすばらしい世界を生きている僕たちが、その「河」を未だ渡ることができないでいる彼らを大きな優しいまなざしで、その日が来るまでのんびりと待ってやろうじゃないか。
まあ,その頃には僕らは,もっと先へ行っているんだけどね。


とても深い言葉だと思います。私も家庭医療についてのアイデンティティの樹立に悩む医師の一人であるのでこの言葉に励まされるとともに、これからも様々な観点から考えていきたいと思いを新たにしました。

2つめの斬新な点はtwitterを使用したWS実況中継です。これはあらかじめ参加者にtwitterのアカウントをとるよう呼びかけ、WS議論中もその内容をどんどんつぶやき続けるものであり、それが結果としてリアルタイムの議事録となり、それに加えてこのWSに参加できなかった人がネットを介して擬似的に議論に参加するという構図が生まれていました。これを岡田先生は「社会実験」と称していましたが、実際にtwitterなどのSNSの学習ツールとしての可能性を感じさせるような非常にインパクトの強い体験をさせていただきました。

私自身も議事録の一翼を担わせていただいたtwitterの記録はこちらリンクになります。
また岡田先生自身のブログに掲載したWSの感想はこちらリンクになります。

スタッフとしての経験を少し語ります。

全国各地に散らばるやる気のあるスタッフに囲まれながら行うskype会議は非常に刺激になりました。私自身これまで生徒会活動などのこういった企画する側に回ることも多かったわけですが、改めてこのようなスタイルで活動するとやはり企画する側にいるほうがその学びは非常に大きいと感じました。

これはその企画に対する思いも強く、またそのことを考えている時間も長いためではないかと思われます。当日は主に部屋の管理や裏方に位置する仕事をこなすことが多かったわけですが、その分より多くの人と知り合うことができ、コミュニティーの形成にも役立ちました。

またskypeやSNSをはじめとした様々なITツールの力をまざまざとみせつけられたことも印象的でした。今やこれらのツールを使いこなさずして、リーダーの立場に立つことは難しいでしょう。医師はその性質上マネージメント能力も問われます。とくに家庭医という立場ならなおさらです。このIT能力向上は必須と感じました。

全体として、「若手」の言葉に代表されるように非常に力があふれる会であったと思います。またテーマを「志」としたように先を見越した医師像の形成に役に立つ非常に貴重な体験をさせていただきました。
私は来年度の冬セミナーもスタッフとして関与することがほぼ確定しています。今回の会の感動を旨に来年度の参加者にも大きな感動体験を提供できるように頑張りたいですね。

中村医師

以上で報告を終了します。関係者の皆様、読んでいただいた皆様、ありがとうございました。