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 2018年1月21日(日)

医療懇談会「夏に向けて気をつけること」

  • 2010年6月20日(日)
  • 閲覧件数
    2,925

 京都家庭医療学センターシニアレジデントの中村琢弥です。
このたび2010年6月17日に市民の方向けに医療懇談会を行いましたので、その報告を行います。
医療懇談会様子1
今回は「夏に向けて気をつけること」という題材で約1時間の講演をしてほしいとの依頼をいただきまして、京都家庭医療学センターのシニアレジデントである私(中村)が担当することになりました。

さて、いきなり少し脱線しますが、私中村は講演会などを始め、誰かに何かをプレゼンテーションをする機会をいただいた際に、基本的には事前構想を練ることとしています。その過程でまず考えることが「PANICの法則」です。

すなわち、以下のことを前もって構想として練ることとなります。

  • P:Purpose 目的を理解しているか?
  • A:Audience 聴き手は誰か?
  • N: Need 聴き手の求めているものは?
  • I: Information どんな情報を盛り込むか?
  • C: Communication 伝える準備はできているか?

今回はこれに沿ってひとつずつ解説していきます

動画もアップしています。(6分割しています。)

★P:Purpose 目的を理解しているか?
まず「そもそも何のためにプレゼンするか」を考え抜きます。ここで求められている成果とは何か、そこを自分の中で徹底的に明らかにすることで最終的なプレゼン全体に強固な"軸"が通ります。

今回は市民の夏の過ごし方において、気をつけるべき医学的事象の理解を促進することが目的…、つまり「知識の伝達」と「(大きな意味での)行動変容」が求められているプレゼンと理解しました。

★A:Audience 聴き手は誰か?
どんな人々が聴き手かをリサーチします。相手の人数は?年齢層は?立場は?プレゼン内容への事前の理解の程度は?などです。

事前に事務の方に尋ねたところ、今回の対象者はおよそ60代から80代のご高齢の方が対象で、人数的には10から20名ほどとのことでした。基本的には一般市民であり、医学的内容についての理解は乏しいと考えてよさそうでした。また地域柄から農作業に従事している方が多いとの推測も成り立ちましたので、求められたテーマと併せて盛り込むInformationを吟味していく必要があると考えました。

★N: Need 聴き手の求めているものは?
これは絶対に外してはいけない要素です。すなわち「聴き手のニーズがどこにあるか」、です。Purposeが自分主体ならNeedは相手主体の思考過程です。これは事前のリサーチが必須であり、「自分という人間に求められていることは何か」ということを少しでも知る必要があります。これを行うことで聴き手のプレゼンへの食いつき度合いが大きく変わります(逆にここを外すと聴き手は興味を失って居眠りしてしまいます…残念なことに)。

さて、今回は「夏に向けて気をつけること」というテーマを事前に与えられました。そして、様々手を尽くしていたのですが、結局事前にはそれ以外のニーズは明らかになりませんでした。よって、対象者の年齢層や私という「医師(家庭医)」という立場に依頼をうけたことから、ある程度推測せねばならない状況となりましたので、少し難しかったです。

★I: Information どんな情報を盛り込むか?
おおよその方向性が定まったところで具体的な内容の吟味になります。ここの質はPurposeを吟味することでおおよそ決まってきます。多すぎては忘れられてしまい、少なすぎては退屈なので、よい案配を探していきます。

今回は夏に医師に聞きたいこととは何かということで、「熱中症」にテーマを絞りました。しかし、単に熱中症の病態説明をしても退屈なだけです。そこで、

「熱中症の勘違いしやすいポイント」、

「市民でもできる対応手段(水分&塩分摂取、涼しいところへの避難、救急要請のタイミングなど)」、

「熱中症にまつわる素朴な疑問」

以上の3点に題材を絞りました。
これなら私でも何とか語ることができそうです。

★C: Communication 伝える準備はできているか?
最後に効果的に伝える方法を考えます。使うことのできるツール・機器は何か?場所はどのようなところか?聴き手からの距離はどの程度で、行うべきジェスチャーはどのようなものか?などなど、当日の実際の講演のようすをイメージしながらよく伝わる方法を様々な角度から吟味します。

今回はパワーポイントによるスライド方式を選択(私自身がもっとも得意なツールであるということ、会場・人数から適切なツールと判断)、会場は狭めの会議室程度で和室、聴き手からの距離は3から5m程度と狭めのようです。よって皆さん座布団にすわっているスタイルのようなので私も座布団に座るスタイルで勝負に臨むこととし、必然的に座りながらできるジェスチャーのみを使用することとしました。またなるべく参加型・双方向型の講演にすべき(人数的にも十分可能)と考えましたので、割り当てられた1時間において質疑応答時間を長めにとり、講演そのものもクイズ形式として、随所に手を上げ、声を上げてもらったりする仕掛けを設けました。最終的にはスライドは20枚程度、質問は合計5問(2?3択問題)となり、質疑応答時間を目標30分とることとしました。

これらのことを前提にMind mapを作成しつつさらに数日吟味し、当日を迎えました。

医療懇談会様子2
当日は非常に暑い日で、テーマ設定からすると、もってこいの天候でした。メンバー、会場もほぼ想定通りで、スムーズに導入していくことができました。

予定通り、スライドでは随所に手を上げてもらう参加型形式をとり、質問がひとつ終わるごとに「ここまでで何か聞いておきたいこと、分からなかったことはありませんか?」という軽い問いかけを挟むようにして、双方向の議論を促しました。結果、その都度1つ2つの質問が行われ、そこを導入にして次のテーマに移るなどの円滑な展開を意識して作ることができました。さらに、質問を受けたときには「よい質問です、〇〇という質問と理解しましたがよろしかったですか?それについては〇〇です。」という「質問のオウム返し」を徹底しました。このことで質問者に対し、質問を正確に理解してもらえ、承認してもらったという安心感を与え、場に質問しやすい雰囲気を生み出す効果があります。このテクニックも今回意識的に導入しました。

予定の1時間はあっという間に過ぎ、感想文を書いていただいて終了となりました。

医療懇談会様子3

感想文には非常によかったという意見を多く受けました。とくに日常生活で実際に体験した内容がとりあげられていたらしく、はっとさせられたとの意見もあり、今回の内容吟味がうまく働いていたように感じました。

今回の講演会全体としてのNext stepとしては、まず高齢者対象としてはスライドの文字数が多すぎたことです。これは今後さらに腕を磨いていく必要がありそうです。できれば高齢者にスライドを使用する際には絵や記号のみが望ましいのかもしれません。ビデオもとっていたので後で視てみたのですが、やはり言葉が早口で聞き取りづらい箇所もあり、「え?」とか「あ?」などの言葉が時々挟まることがあったので、そのあたりのスピーチスキルの向上も必要と考えました。ジェスチャーはおおむねオーバーアクションで自分としてはよかったように感じましたが、そのあたりについて言及した感想文からのフィードバックがなかったため、今後KCFMグループからのフィードバックを受けたい分野です。

今回の講演会では対象人数こそ少なかったものの、これまで基本としていたプレゼンスキルと新しく導入したプレゼンスキルを総動員して挑んだものでした。今後、これらのスキルをさらに洗練させて、よりよいプレゼンテーションを目指していきたいです。

医療懇談会様子4