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 2018年4月27日(金)

地元高校生向け講演会「医師になるということ-地域医療の現場より-」

  • 2010年7月14日(水)
  • 閲覧件数
    3,856

中村琢弥です。
地元の高校にて高校二年生向けに「医師」という職業についての講演会を行いましたので
その報告を行いたいと思います。

地元の高校での講演会開催 

このたび、地元の高校での講演会の機会をいただき、私中村が担当させていただきました。
今回の講演会は、地元の高校(進学校)が舞台です。対象は高校二年生進学コースの生徒であり、進路指導担当の先生よりのご依頼です。この高校では進路指導において、大学合格までで終わってしまうものではなく、そこから先の職業選択をどうするかという先のことまで考えて、進路を選択していく、という進路指導をしているそうです。今の厳しい時代を生き残るためには、きちんと自分でよく考えた進路選択が大切と考え、そのためにさまざま工夫をしているようすが伝わってきました。
今回の講演会企画もその工夫の一環で、様々な職業の人を呼び、それぞれの職の人のリアルな話をきくことで、高校生の進路選択の一助とすることが大目標です。今回の依頼をいただく背景には、もともと当院では「高校生一日医師体験」という高校生向けの病院実習を熱心に取り組んでいたという経緯があり、その流れからこの新企画の講師依頼に結びついたということになります。実際の当日講演者は院内で議論がありましたが、一番若く、高校生に近い医師のほうが心に響く話ができるのではなかろうか、との意見より、京都家庭医療学センターシニアレジデントの私中村が抜擢されました。
講演をするにあたり、まず私は「話をする対象者の特徴」と「高校側からのニーズ」、「舞台と使用できるツール」の聴取を行いました。先方からの返事はすぐにあり、以下の事項が聴取できました。

■日時:7月13日(火)14:20-15:10(50分間) 
…講演30-40分+質疑応答

■対象:進学クラスの2年生全員(85名) 
…その内医師希望は10名程度

■会場:視聴覚室、2クラス分の広さ、
マイク要、プロジェクター可(PCは持ち込み)

■高校側からの希望:
なぜ「医師」になった(目指した)のか?
進路選択したきっかけは?
高校-大学生活の紹介等も交えて


これによりずいぶんイメージがもちやすくなりました。私はここからいつものようにMind Mapにアイデアを起こし、それを広げていくことで話す内容を選定していきました。
実際に当日の章立ては以下のように設定しました。
1)    医師の働き方・そのバリエーション
2)    医師になるには
3)    私が医師になるまでの奇跡
4)    医師の魅力とは?

これに従い、話を進めていきます。

医師になるということ

1)    医師の働き方・そのバリエーション
自己紹介とアイスブレーキングの後、まず私は高校生の皆さんに医師のイメージを浮かべてもらうように依頼しました。その後、一般的な医師の定義を述べ、そして、高校生でもイメージしやすいように、ドラマや漫画に登場する医師を取り上げて説明していきました。最近は医療現場を取り上げた内容の物語は枚挙に暇がなく、これだけでも非常に様々な医師の生き方のバリエーションを感じてもらえたのではないかと思います。また知っているドラマが紹介されると、一部の高校生が「あ!○○だ!」と思わず口にしてくれるので、「そう!その通り○○ですね!」といって、半ば強引に双方向のコミュニケーションに持っていくようにしました。これができたのもよく知るドラマを題材にしたおかげでした。この最初の章の"つかみ"は非常に良かったと思います。
 

医師になるには


2)    医師になるには?
ここでは一般的な医師になる道のりを説明しました。まず「医師の道は基本的には生涯学習です!」と言い切るところから始めました。このメッセージは大変悩んだのですが、やはり医師という職業の根幹である"学び続ける職"であるという点はまず伝えなければ、医師になる前後をリアルに伝えることは難しいと思ったからです。結果として事後の感想文では、「医師になる過程が整理されてよかった」との肯定的な意見が多かったため、ある程度わかりやすく伝えることに成功したのではないかと思います。

私が医師になるまでの軌跡 


3)    私が医師になるまでの奇跡
このセクションは恥ずかしいながら私の昔の写真を多く披露しました。まず、とっかかりとして「私の医師を目指すにいたったきっかけ」を話しました。私は幼少時の早い段階で医師を将来の夢と定めたので、逆に高校生でまだ進路を決めていない人にとっては実感いただけないかもしれないと危惧もしましたが、それでもありのままを伝える方が心に響くだろうと考えたこと、このポイントをきちんと伝えなければ、その後の私のメッセージも響かないだろうと考え、そのままストレートに伝えることにしました。そして順番に、高校時代、大学時代、ケニア感染症研修時代、医師国家試験時代(ここは昔NHKに取材された時の動画を使用)、そして、初期研修医時代を経て、現在の働く様子(往診、外来など)を、写真中心に紹介していきました。今回のスライドコンセプトとしては、説明は少なく、写真を多くと定め、高校生に明瞭なイメージを持って帰ってもらうことを重点的に意識しました。その点は非常に高評価だったようで、ところどころ入るちょっとおもしろい写真で笑いをとったり、真剣に働く様子に息をのんだりと、前のめりに聞いていただくためによい効果を生んだように思います。

 


4)    医師の魅力とは?
ここでは最後まで何を伝えるか本当に迷いました。迷ったあげく、私は私がこれまで歩んだ医師人生の中で、心に刻まれた出来事をいくつか紹介することにしました。やはり言葉だけではなく、実感のこもったリアルな経験談のほうが心まで伝わると考えたからです。そのため、ここでは、悲しいことや困ったこと、うれしいことなどを率直に伝えることとなりました。具体的には、
・救急外来で出会った覚醒剤により錯乱する青年の症例、
学会発表の様子リンク
・サンタクロースに扮装してNICUを闊歩し、プレゼントを配ってまわったこと、
新米お母さん相手に子供の蘇生方法を指導したことリンク
・救急搬送されてきた重症くも膜下出血(手術不能)の方の最期をみとるために、家族のために個室をとるべく奮闘したこと、
・末期がん患者の最期の夢を叶えるために病棟でビールを飲んでもらったこと、
・研修医時代に激怒された患者さんに最後には認めてもらえたこと、
・糖尿病患者さんがわざわざ医局まできてくれて「こんなにダイエット成功しましたよ、先生!」と報告してくれたこと、
・遠方に出張していて、受け持ち患者の最期に間に合わなかったにもかかわらず、その家族に心から感謝されたこと、
・落ち込んでいる時に患者さんからの投書で自分宛によく診てもらったという内容があり、"どんなときもそのがんばりをみていてくれている人がいる"と感じて励まされたこと、

以上のような経験を、そのメッセージ性とともに話しました。そして、将来自分がどんな風になっていたいか、そしてそのためにはどのように過ごすべきか、焦ることなく、ゆっくり道をさだめてほしいと、そして「これだ!」と思うものはつかんで離さないようにしてほしいことを伝えました。医療の世界は広大で、うれしいこともかなしいことも含めて素敵なことに充ち満ちていることを最後に伝え、願わくは医療現場でお会いしましょう、と締めて講演会は終了しました。

プレゼンの様子
 
話し終えての感想としては、全力疾走で駆け抜けた、という感じでした。最後まで全身でジェスチャーをとりながら、気持ちを込めて話したつもりです。それらの甲斐あってか、話を進めるに従って、どんどん向けられる視線に熱がこもるのを感じました。そして最終的には非常に大きな拍手をいただくことができました。事後の感想文内容もそうでしたが、非常によい手応えで、医師という職業のイメージにとどまらず、働くとはどういうことか、また将来を考えるとはどういうことか、これらについての私の考えが伝わる講演会になったと思います。またこの企画そのものがとてもよい企画だと思いましたので、ぜひ私が最後になるのではなく、次につながる講演会になっているとうれしいと思いました。
またこの講演会をとおして、私自身の原点と向き合うことができたように思います。私はなぜ医師を目指したのか、私が現在立脚している位置はかつて私が夢見たことにかなり近づいており、胸を張って進んでよいということ、そして、これからどのような医師になっていきたいのか…、そのようなことを改めて考えさせられるよい機会だった思います(写真は感想文集計と当日スライド文面)。
 


今回の取り組み全体のNext stepとしましては、少し早口になってしまったこと、同じジェスチャーをとるにしてももっとうまく立ち回ることができたのではないか、ということなどの「スキル面」のことがまず挙がります。このあたりは回数を重ねるに従って洗練されてくると思います。また、事前のニーズ聴取が少し甘く、今後可能なら高校生自身からのニーズも集められるとよかったというところもあります。事前に高校側に直接訪問して打ち合わせをするなど、他に活用できる手段があったかもしれないと考えられるだけに、今後どのようにすべきか検討していきたいと思いました。

以上です。本当によい学びでした。これからもぜひ!